「ウチのスタッフは、指示したことの意味を考えずに、
言われたままをやってしまうんだよなあ。
もう少し考えてくれればわかると思うんだけど」
という上司の声を聞くことがあります。
一方、部下のスタッフは
「上司は指示があいまいで、何を期待しているのか
よくわからないんです。かと言って、余計なことを聞いて
『そんなこともわからないのか!?』と思われるのも嫌だし・・・」
と思っていたりします。
たとえばこんな例がありました。社長が
「商品ごとの販売数とクライアントごとの売上数を集計する表をつくって
もらえますか?記録をとっていきたいんだ」
とスタッフに依頼をしました。
ただ、社長の頭の中にはその具体的なイメージが
あるのでしょうが、このセリフの中には依頼内容が
ほんの一部しか表現されていません。
このとき、スタッフはどのような表をつくったか?
単純に30日間の日付をズラッと横に並べて、
その下に販売数と売上数を入力するだけの簡単な表。
その月の合計値を表示する欄もなく、また
今年1年の月別の推移を見るような表もなく、
非常に見づらいモノになっていました。
そして社長はそのスタッフにやり直しを指示しました。
このとき、上司も部下も嫌な思いをしています。
上司は自分の期待レベルに達しないスタッフにガッカリし、
不満を抱きます。
そして部下は自分の評価を低く見られた上に
時間を余計に割く羽目に。
そのようなお互いにストレスを抱えるようなことを
予防する道はないものでしょうか?
あります!
それは、
「仕事を依頼された瞬間に、上司の指示の意図をたずねる」
ことです。
たとえば今回の例のように
「販売数と売上数の集計表をつくってほしい」
という場合は、ちょっと勇気を出して
「それはどのような表に仕上がればベストですか?」
と上司に尋ねてみるのです。
すると、
「そうだな、販売数と売上数を商品ごとクライアントごとそれぞれの数を手入力していくと、
毎月の記録が自動計算で出てくるようなものがあると助かるんだが。
というのも、販売数と売上数の目標を毎月どれだけクリアしているか、
新規開拓のクライアントの割合がどれだけ増えているかを把握したいんだ」
と教えてくれることでしょう。
そうしたら、その場でコピー用紙を1枚取り出して、
「こんな感じの表ですか?」
と図に書きながら一緒に確認していくのも良いでしょう。
ほんの10分程度の会話の中で、期待されている完成物の
原型が仕上がるので、あとはそれを形にするだけの作業に変わります。
なぜ社員には社長の危機感が伝わらないのか?
社長が会社のお金をよく理解し、何をすべきかがわかった頃に、
実は新たな問題が顕在化します。
それは、社長と社員の危機感のズレです。
社長からすると、平和そうな表情で
昨日と今日が何も変わらないような社員の仕事ぶりを見るにつけ、
「会社がこんなに大変な状況なのに、よくそんなノホホンとしていられるな!?」
と腹立たしく感じることも一度や二度ではないでしょう。
この危機感のズレは、どこから来るのでしょうか?
「社員の能力が低いから?」
「社員にやる気がないから?」
たいていの場合は、そのどちらでもありません。
ズレの原因は、社長の頭の中と社員の頭の中にある
「情報量の不一致」から生じるのです。
社長には見えていて、社員には見えていない情報があるから、
現状の捉え方にズレが出て、それが危機感のズレとして映る のです。
「では、現状認識を社員と共有するにはどうすればいいのでしょうか?」
そこには、社員の誤解から「優秀な社員が退職」したり
「社長への尊敬を失う」などの落とし穴も潜んでいるので、
それを踏まえて具体的にお話ししていきましょう。
落とし穴①「ウチの会社、そんなにピンチなのか?」と誤解される怖さ
まず、社員と会社の収支状況を共有するときに
気をつけなければならないことは、
社員に「必要以上に心配させない」ことです。
本当は業界平均と比べれば中の上くらいの状態なのに、
社長が「ウチは資金繰りが厳しいんだ」「ギリギリでやっている」
と連発することで、(この会社、もう1年ももたないのでは!?)と
誤解した優秀な社員が、先手を打って退職してしまう、
なんていうことがあってはお互いに不幸です。
したがって、過不足なく今の会社の状況がどうなのかを
伝える工夫が必要です。
そのコツは
「全体の中における当社の位置づけ」を客観視して伝える
ことです。
落とし穴②「社長はお金の話ばかり、亡者か?」と誤解される怖さ
もう1つ気をつけておきたいことは、
社長が「お金、お金」と連発すると、
とくに最近の若い社員は興ざめしてしまうところがあります。
場合によっては、「社長の金儲けのために
俺たち働かされているんじゃないか?」という気持ちになって、
社長が数字を口にするのに反比例してモチベーションが下がる
ことすらあります。
「その数字にはどういう意味があるのか」を
社員の共感を得られる形で伝える工夫が必要です。
これら2つの落とし穴を避けて、
きちんと社長の頭の中の情報を社員の頭の中に届けることが大切。
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