社員にとってメリットがある指示をしているのに、
ちっとも変わらないことがあります。
たとえば、「残業せずに早く帰りなさい」という指示。
ダラダラ長くやるより、段取りよく集中してやることで、
会社としては必要以上の残業代を軽減できます。
一方、社員にとっても、早く帰ってゆっくり休んだり、
遊びにいったり、家族との時間を過ごせるなど、
メリットがある指示のはず。
それなのに、なぜか行動に移されない。
そんなケースは多くの会社でみられます。
その本当の理由は何なのでしょうか?
そこで、ある会社で現場の社員たちに実際のところを
ヒアリングしてみたところ、次のような本音が隠れていました。
1)「早く終わると面倒なことが待っている
(他のことをやらされる)のではないか?」
2)「本当に早く帰ると、『自分だけ先に帰って冷たいヤツ』
と陰口を言われるのではないか?」
3)「もし早く仕上げると、次から会社の要求基準が引き上がって、
ますます大変になるのではないか?」
いずれも、言われてみれば納得の疑問です。
しかしながら、それを上司や社長にストレートに言える人は
いませんでした。なぜなら、
いずれもネガティブな疑問なので、
自分の評価が下がることを恐れるからです。
ただこのときは、第三者の私が
「何を言っても否定しない、説得しない」
という安心安全ポジティブな場をつくった上で
ヒアリングしたから出てきた本音でした。
その会社では、専務が翌日全体ミーティングを開き、
「早く帰ることを会社が推奨する意図と、気兼ねは不要である理由」
「早く帰れる人は努力している証であり陰口は論外」
「早く仕上がって、仮に会社の要求基準が上がるときは、
休みやボーナスが増えるなど社員への還元も伴うこと」
の確認をしました。
さらに、その日から18時に5分間の夕礼を行い、
残りの作業量を全員で共有したところ、
それまでより1時間以上、残業が減りはじめました。
「何度言っても変わらない」とき、その本当の理由がどこにあるか、
を知っておくことは、効果のある対策を打つ上で
とても大切なことだと再認識しました。
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