なぜ社員には社長の危機感が伝わらないのか?
社長が会社のお金をよく理解し、何をすべきかがわかった頃に、
実は新たな問題が顕在化します。
それは、社長と社員の危機感のズレです。
社長からすると、平和そうな表情で
昨日と今日が何も変わらないような社員の仕事ぶりを見るにつけ、
「会社がこんなに大変な状況なのに、よくそんなノホホンとしていられるな!?」
と腹立たしく感じることも一度や二度ではないでしょう。
この危機感のズレは、どこから来るのでしょうか?
「社員の能力が低いから?」
「社員にやる気がないから?」
たいていの場合は、そのどちらでもありません。
ズレの原因は、社長の頭の中と社員の頭の中にある
「情報量の不一致」から生じるのです。
社長には見えていて、社員には見えていない情報があるから、
現状の捉え方にズレが出て、それが危機感のズレとして映る のです。
「では、現状認識を社員と共有するにはどうすればいいのでしょうか?」
そこには、社員の誤解から「優秀な社員が退職」したり
「社長への尊敬を失う」などの落とし穴も潜んでいるので、
それを踏まえて具体的にお話ししていきましょう。
落とし穴①「ウチの会社、そんなにピンチなのか?」と誤解される怖さ
まず、社員と会社の収支状況を共有するときに
気をつけなければならないことは、
社員に「必要以上に心配させない」ことです。
本当は業界平均と比べれば中の上くらいの状態なのに、
社長が「ウチは資金繰りが厳しいんだ」「ギリギリでやっている」
と連発することで、(この会社、もう1年ももたないのでは!?)と
誤解した優秀な社員が、先手を打って退職してしまう、
なんていうことがあってはお互いに不幸です。
したがって、過不足なく今の会社の状況がどうなのかを
伝える工夫が必要です。
そのコツは
「全体の中における当社の位置づけ」を客観視して伝える
ことです。
落とし穴②「社長はお金の話ばかり、亡者か?」と誤解される怖さ
もう1つ気をつけておきたいことは、
社長が「お金、お金」と連発すると、
とくに最近の若い社員は興ざめしてしまうところがあります。
場合によっては、「社長の金儲けのために
俺たち働かされているんじゃないか?」という気持ちになって、
社長が数字を口にするのに反比例してモチベーションが下がる
ことすらあります。
「その数字にはどういう意味があるのか」を
社員の共感を得られる形で伝える工夫が必要です。
これら2つの落とし穴を避けて、
きちんと社長の頭の中の情報を社員の頭の中に届けることが大切。
今、多くの会社で「社員の採用に悩んでいる」
と言う声が飛び交っています。
あなたの会社ではいかがでしょうか?
もし当てはまるなら、新たな社員の採用活動と並行して、
同時に、既にいる社員を引き止めること、つまり
「離職率を下げる取り組み」が重要になってきます。
実際のところ、「やりがいが感じられない」と言う理由で、
簡単に会社を辞めてしまう人も多いようです。
最近では、入社して3年後に入社した社員の3分1が退職していると
言われています。
そして、特に問題とされているのは、
若手社員らが次々辞めていく「連鎖退職」です。
ある日突然社員が次々と辞めていく。
このような連鎖退職が原因の倒産も、今増えてきています。
なぜこのような問題が起こるのか?
それは世代間での価値観の違いも多いかと思います。
本当は「上司に話を聞いてほしい」「悩みを相談したい」と思っていても、
「仕事は、見て覚えるものだ!」「自分で盗め!」というように、
部下に対して、ただ「頑張れ」と努力と根性で、
鼓舞したりしていないでしょうか?
この様な”体育会系的な価値観”を持った世代が、
会社を支えてきた事実は確かにあります。
ただ、だからと言って、これを「最近の若者は根性がない」
などと断罪してしまうのは簡単ですが、
それでは根本的な解決策にはなりませんね。
そこで、「なぜ社員が辞めてしまうのか」の理由について
掘り下げてみましょう。
まず、やりがいが感じられないと言う言葉の裏には、
2つの理由があると考えられます。
1つは、「①意味のわからない仕事の振り方をされる」から。
つまり具体的な説明もなく、ただ「これをやっておけ」と言われ、
それが何のためにやるのかもよくわからず、
単なる作業としてやっている場合です。
その場合、社員はそこに意味を見いだすことができず、
やりがいが感じられません。
もう一つは、「②やっても認めてくれない」から。
つまり、上達している実感が持てないので、
気力が持たないと言うことです。
そして、やりがいが感じられない時に、
誰か先輩に相談できれば良いのですが、
「③誰に相談していいかがわからず、孤立無縁になっている」
状況が続くと、やりがいが見出せず、辞める可能性が高まるでしょう。
以上の3つは、「給料が高いかどうか」あるいは
「休みが多いかどうか」などの待遇面とは関係がありません。
いわゆる「仕事の与え方」の問題です。
つまり、お金の問題ではないので、
儲けが出ているか否かに関係なく、その気になれば
どの会社でも取り組めることです。
そこを見落としたまま、単に
「人が集まらないから、給料を上げなければ」
などと発想すると、根本的な解決にならない場合があるので
注意したいものです。
したがって、上記の3つの逆のことを実践することが、
社員が辞めることを踏みとどまらせます。
①「その仕事にどんな意味があるか」
「なぜあなたにやってほしいか」を予め伝える。
②その仕事を完了したときに、期待通りの仕事なのか否か、
そして「どこが良くて、どこに改善の余地があるか」
をフィードバックする。
③「仕事で困ったら、誰に相談すればいいか」を予め決めておき、
1人で抱え込まなくて済むようにする。
できることからトライしてみましょう!
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