ミーティングで決めたことなのに、スタッフがいつまで経っても
それが行動に移さない事実を目にしたとき、社長が
「自分で考えようとしない、やる気のないスタッフだ」
と判断してしまうことがあります。
しかし、よく話を聞くと、そういうケースの大半は、
単にそのスタッフは「筋道を立てて対策を見いだす考え方が
わからないだけで、やる気がないわけではない」ように思います。
先日セミナー会場で、ある流行っている会社の社長から、
こんな相談を受けました。
「アポを1日50件以上入れるようにスタッフに指示したのですが、
いつも3~4件足りないんです。
社長命令なのに、1か月たっても全然変わらないので、
彼にはもっと厳しく言ってやらないといけないと思うのですが、
何かペナルティとか与えたほうが良いのでしょうか?」
そのような場合、ペナルティを与える前にやっておくべきことがあります。
それは、「できない理由を具体的に聞く」です。
たとえば、アポをきっちり埋めない理由として、
ある会社のスタッフが次のような事情を話してくれたことがありました。
「たとえば前回ずいぶん待たせて嫌な思いをさせてしまった
お客さんには、次は待たせずに打ち合わせをしたいので、
わたしなりに考えてその直前の枠を空けて、
先の日程にアポを入れたりするんです」
お客さんから何度も
「あとどのくらい待ちますか?」
と聞かれたり、
「これ以上待てないから、今日はもう帰る」
と面と向かって言われるのは、営業で彼です。
そんなとき、申し訳なさと会社の方針のはざまに
立たされているとのこと。
これは、現場で働く彼の立場に立って考えたら、
その心情は理解できるところです。
社長がそんな心情を知らずに、アポを埋めることを強要すると、
上記のような本音をうまく自分で伝えられないスタッフは、
どう感じるでしょうか。
「社長は、収益ばかり優先して、何もわかってくれない。
言ってもわかってくれないから、適当に流しておこう」
と判断し、信頼関係が崩れてしまいかねません。
もしその部分は認めて、他にできる対策を一緒に探して
あげたとしたら、スタッフの腑に落ち方は違ってきます。
その人の行動には共感できないときも、
その人がおかれている状況や背景には
共感できることがあります。
できない理由探しを手伝うと、解決は早いかも知れませんね。
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